[Q]ビデオカードやメモリを正確に装着していない場合、画面に何も表示されないままビープ音が鳴りますが、このビープ音のパターンによってPCのどの部分に問題があるのか判断できると聞きました。ビープ音のパターンがそれぞれどのような意味を持つのか教えてください。

(和泉 弘さん)

[A]

 PC/ATの標準入出力装置、すなわちPC/AT互換機と名乗るために備えていなければならないデバイスは少なく、ビープ音を鳴らすためのスピーカー出力は、キーボードやISAの前身であるATバスとならんで、初期のPCから装備されている標準入出力装置の一つです。PCはシステムの起動時にキーボード、メモリ、ビデオカードなど、各種デバイスの自己診断を行なう「POST(Power Of Self Test)」と呼ばれる機能を持っています。POSTはチェック中の項目や、検出されたエラー内容をユーザーに知らせる手段として、PCIやISAスロットにつながっている特定のI/Oポートアドレスに「POSTコード」と呼ばれるデータを出力します。POSTコードは8bitのデータで、256通りの状態を表現できるのですが、その内容はAMI、Award、PhoenixなどのBIOSメーカーによりそれぞれ異なっています。メーカーごとのPOSTコードの内容については後ほど説明しましょう。

 このPOSTコードは基本的にバスへ出力されるデータであり、すべてのユーザーが確認できるものではありません。POSTコードを細かくチェックするためには、PCIやISAバスに接続するタイプの、LEDを使用したPOSTコード表示装置などが必要となります。ただし、メインメモリやビデオカードが正常に動作していれば、POSTがチェック中のデバイスの状態や、検出したエラーの内容を画面に表示する機能も存在します。PCを起動した直後のメモリチェックやIDEデバイスを確認する画面はこれにあたります。たとえば、キーボードが接続されていなかった場合、この画面に「Keyboard error」などのメッセージが表示されることは、多くのユーザーが経験していることでしょう。

 メモリやビデオカードに異常があった場合、POSTがエラーを画面に表示することが不可能なケースもあり得ます。こういった状況を考慮して、PCのシステムBIOSでは、スピーカーに出力するビープ音の組み合わせによってエラー内容をユーザーに知らせる仕組になっているのです。エラーの内容によって発生するビープ音のパターンは、やはりBIOSの種類によって異なっています。たとえ似たようなビープ音が鳴っていても、BIOSが違えばそれが示すエラー状況は違うのです。

 ビープ音を人間が聞き分けることは、やや難しい上に、BIOSのコード中にビープ音の出力パターンデータを用意しておく必要があることから、すべてのエラーに対するパターンが存在するわけではありません。したがってビープ音で分かるエラー状況はごく簡単なものに限定されます。前述したように、BIOSメーカーが違えばビープ音によって示されるエラー状況の意味が異なる上に、同種のBIOSといえどもマザーボード固有のビープ音もあり得るので、マニュアルにはビープ音とそれに対応するエラー状況が書かれていて当然とも思えます。しかし、理解しにくい手段であるためか、現状では大半のマザーボードメーカーがこれを省略しています。

 対して、BIOSメーカーではPOSTコードとビープ音の対応をなんらかの形で説明しています。Award BIOSとPheonix BIOSの所有権を持つPhoenix Technologyのホームページには「PhoenixBIOS Post and Beep Codes」と「AwardBIOS Post Codes and Error Messages」という説明文がPDFファイルでダウンロード可能になっています。もっともAward BIOSの場合、このドキュメントを読んでもビープ音に関する記述は少なく、「1回または2回連続のビープ音の場合はビデオカード関連のエラーで、3回以上のビープ音はメインメモリ関連のエラーである」という簡単な説明にとどまっています。

 一方、Phoenix BIOSに関してはPOSTコードの説明とあわせて、ビープ音についても比較的詳しく解説されています。いくつか抜粋してみると

1-2-2-3 BIOS ROM checksum
1-3-1-1 Test DRAM refresh
1-3-1-3 Test 8742 Keyboard Controller
1-3-4-1 RAM failure on address line xxxx *
1-3-4-3 RAM failure on data bits xxxx * of low byte of memory bus
1-4-1-1 RAM failure on data bits xxxx * of high byte of memory bus

となっています。xxxxの部分には、問題の発見されたメモリアドレスを知らせるデータが表示されます。また数字はビープ音の連続する回数を示し、1は“ピー”、2は“ピーピー”といった鳴り方を意味します。1-1-2-1であれば、「ピー、ピー、ピーピー、ピー」と鳴るわけです。このように凝った作りでありながらも、現在Phoenix BIOSはノートPC以外ではほとんど採用されておらず、PCの自作の際に役立つことは少なくなっています。

 AMI BIOSは、American Megatrendsのホームページ で、「AMIBIOS Beep Codes and recommended solutions」としてPOSTによるビープ音の説明を掲載しています。
要約してみると、

1回  DRAMのリフレッシュの異常
2回  パリティエラー
3回  最初の64KBメモリ空間の異常
4回  タイマーの異常
5回  CPUの異常
6回  A20ラインのゲートの異常
7回  CPUの例外発生
8回  ビデオメモリの異常
9回  ROMのチェックサムエラー
10回 CMOSメモリエリアの異常

となっています。

 簡単にその異常の原因を説明すると、1から3回まではメインメモリの異常、4、5、6、7、10回はマザーボードの異常、8回はビデオカードの異常、9回はBIOS ROMの異常となります。

 いずれのBIOSにしろ、ビープ音によるPOSTエラーの警告は、PCが正常に起動しない場合の原因を突き止める重要な判断材料となります。メモリ、ビデオカードの挿し込み不足などは頻繁に遭遇する不具合の原因ですが、ビープ音の意味を知っていれば、これらのデバイスに関するエラーが発生した時点で、すぐに特定できるはずです。また、ROMのチェックサムエラーはBIOSアップデートの際に、正常に書き換えが終了しなかったことを判断する材料としても役立つでしょう。

 ビープ音によるエラーの警告は、少々理解しにくいとはいえ、その仕組がビデオ、メモリなどとは独立したものとなっているために、BIOSなどのシステムのクリティカルな部分に問題があった場合でも、それを知る手段となるのです。したがって、PCを扱う上で必須とまでは言えませんが、知識として覚えておけば有効利用できる場面は多いと思います。

左は精新資訊の「POST CARD C200」。ISAスロットに挿してPCを起動すると、LEDにPOSTコードが表示される。右は同等の機能をオンボードで装備するECSの「P6IWT-A+」。LEDはボード左下に見える
(Ta 152H-1)
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