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DOS/V POWER REPORT  Q&A COLLECTION
2002
9月号

[Q]

HDDやファンなどには流体軸受け採用と書かれているものがありますが、この流体軸受けとはどういった仕組のものでしょう?

(仁木史彦さん)

[A]

軸受け」というのはその名前が示すように、回転軸を支えるように作られた受け機構のことを言います。HDD内のプラッタ(データを書き込む金属円盤)や、ファンなどの回転体には、その中心部分に回転軸があります。これを支えて回転を安定させ、回転体がどこかへ行ってしまわないように保持するのが軸受けの役割です。

 軸を支えるには、単にその軸の太さに合った穴があればよい、というものではありません。ゆっくりした回転ならそれでも構わないかもしれませんが、高速に回転する軸を支える場合には、回転を妨げず、回転によるブレや振動を抑制、吸収する高度な機構が不可欠です。

 軸受けにはさまざまな種類がありますが、方式で大別すると「転がり軸受け」と「滑り軸受け」の二つに分かれます。転がり軸受けというのは、軸受け側と軸側との間にスムーズに転がる回転体をいくつか挟んで、両者の摩擦を転がりによって受けるというもので、回転体に球体(玉)を使う玉軸受け(ボールベアリング)などが一般的です。

 滑り軸受けというのは、受け側と軸側との滑りを利用するのですが、素材の工夫などによって摩擦抵抗を下げることで、スムーズな回転が得られるのが特徴です。ご質問の「流体軸受け」もこの滑り軸受けの1種で、受け側と軸側との間に、気体や液体などの流体を挟むことで、受け側と軸側とが直接触れ合わないようにした軸受けを指します。受け側と軸とが直接触れ合わないことから、摩擦抵抗は非常に小さく、発生する抵抗は媒体となる流体の抵抗のみ、となります。

 流体軸受けには、高圧空気を吹き付けるなど、外部から圧力を加える「静圧軸受け」と、軸の回転によって流体が流れることで圧力を発生させる「動圧流体軸受け」があります。HDDやファンで採用されるのが後者で、流体としてはオイルが用いられます。軸や軸受け部分にはV字型の「へリングボーン溝」と呼ばれるものが設けられており、流体が流れ込みやすいように案内します。

図1-1 流体軸受け機構の内部構造
図の流体軸受け機構は、筒状のラジアル動圧軸受けと輪状のスラスト動圧軸受けの二つの動圧軸受けを用いたもの。軸と軸受け部、また外殻の間にはオイルが満たされ、回転時には、回転によって動圧軸受け部から発生する圧力により、それぞれが非接触の状態になる

 流体軸受けの長所としては、回転軸の中心が正確に決まるため回転精度が高い点、磨耗部分がないため耐久性が高く長期にわたって精度が維持できる点、摩擦熱が少ないため高回転に対応できる点といったことが挙げられます。このほか、回転体の振動を伝えにくいため、騒音、振動が少ないといったメリットもありますが、玉軸受けでもボールに傷が付かない限りは異音を発生することはありませんから、やはり最大のメリットは耐久性と高回転ということになるでしょう。軸受けというのは実は非常にデリケートな存在で、わずかな傷でも付いてしまえば機能が失われることがあります。流体軸受けは、動圧方式の場合、回転していないときには受け側と軸とは接触した状態にあります。このときムリな力を加えると、簡単に劣化してしまいますから、注意が必要でしょう。

(天野 司)

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