FILE 03
2001年
3月号

[Q]マザーボードのBIOSを見ていて不思議に思ったのですが、−5V−12Vという電源は何に使われているものなのですか?

   (匿名希望さん)

[A]

 現在のPCで使われているATX電源には、+5V+12V+3.3V−5V−12Vの各電圧が用意されています。このうち、3.3VはATX規格で追加されたもので、オリジナルのIBM PCやPC/ATが持っていた電源は+5V、+12V、−12V、−5Vの四つです。このうち+5V+3.3Vは各種パーツの動作電圧で、+12VはHDDなどのスピンドルモーターの動作電圧になっています。

 現在のマザーボードでは、これら電源から供給される電圧以外に必要な電圧を、マザーボード上のレギュレータで生成していますが、Intel 486以前のマザーボードでは電源が供給する電圧ですべての回路が動作するのが普通でした。PCの動作に必要となると電圧は電源装置からすべて供給していたわけです。となると、−5Vや−12Vの電源も必要があって供給されていたものと考えられます。

 

BIOSのハードウェアモニタでは、マザーボードに−5Vや−12Vが供給されているのを確認することができるが、現在のPCでは実際に使われていることは少ない

 オリジナルのIBM PCやPC/ATの時代、デジタルICの大半は+5V電源で動作するようになっていましたが、IBM PCでメインメモリに使っていた16kbit DRAMは電源として+5Vのほかに+12V−5Vを供給する必要がありました。64kbit DRAMからは+5Vの単一電源で動作するようになり、後期のIBM PCや、PC/XTではこのメモリを使うようになったので、−5V電源はマザーボード上では必要のない電源電圧となりました。しかし、マザーボード上のメモリ以外のICでも同様に複数の電源電圧を要求するものがあり、ISAスロット用の拡張カード上でそういったICを使う可能性も考慮する必要があったわけです。現在でもISAスロットには+5V+12Vだけでなく、−5V−12Vの電源も供給されています。

 一方、−12Vは主にRS-232Cの制御用ICの駆動用電源として使われています。RS-232Cでは信号レベルをプラスとマイナス両方に振るため、ドライバICの電源も+12V−12Vを要求されます(単一電源で動作する制御用ICもあります)。PC/ATの頃はシリアルポートはマザーボード上になく、拡張カードで装備することが一般的だったため、ISAスロットにも−12Vが供給されています。現在のISAスロットのないマザーボードの場合は、−5Vは必要ありませんが、−12Vの電源電圧は必要です。電源の設計仕様の根拠については、正式な資料がないので断言できないのですが、以上のようなことが−5V−12Vといった電源電圧が、今も用意されている理由であると思われます。

 以前、−5V電源を供給しないPC/AT互換機がありましたが、ISAスロット用の拡張カードの中には、やはりこうした電源仕様を持つPCでは動作しないものもありました。現在の技術では−5V−12Vをマザーボード上に構成する電源で生成することは難しくありませんが、このような互換性の問題もあります。わざわざ電源仕様を新しくして、これらの電源電圧を廃止するだけのメリットもないことから、今後もATX電源などでは、変わらずに−5V電源も供給され続けるでしょう。しかし、ISAスロットがないマザーボードでは−5Vを使うところがまったくなくなります。このため、新しい規格の電源では−5Vを供給しないものもあります。たとえば、microATX規格で定められたコンパクトなSFX電源では−5Vを供給しなくてもよいことになっています。SFX電源のコネクタはATX電源と共通で、−5V電圧用のピンは存在しますが、実際には供給されていないのです。

(Ta 152H-1)

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