HP200LX日本語化キット 開発秘話

最終回
200LXと日本語化キットの発売

TEXT:関谷博之
HP 100LXの日本語環境は急速に進化を遂げ、着実にユーザーを増やしつつあった。だが、初心者の比率が上がるにつれて、複雑な200LXの日本語化の作業を自力でできない人も多くなっていた。だれでもインストールできるぐらい簡単にならないものか、そう思った日本語化ソフトの作者が集まり、「HP 200LX日本語化キット」の開発が始まった。

■日本語化キットの開発がスタート

 HP 200LX日本語化キットの開発は、北角権太郎(ハンドル名:ごんたろ)氏の呼びかけで始まった。古くからのLXユーザーでもあった北角氏は、日本語かソフトのインストールが難しく、それが原因で100LXが広く普及しないのを残念に思っていた。月刊アスキーの1993年12月号の付録ディスクに日本語化ソフトが収録されることになったとき、北角氏はソフトをLXに転送するためのインストーラを作成していた。すでにこのころから、日本語化ソフトをパッケージ化してインストールを簡単にする構想があったようだ。

 また、ユーザー数が増えるにつれてサポートの手間もかかるようになり、フリーソフトウェアのままでは作者の負担が大きすぎることも問題になっていた。製品化して作者に正当な報酬を還元することも、北角氏がパッケージ化を考えたときの目的のひとつだった。北角氏はオカヤ・システムウェアという会社を経営しており、製品化プロジェクトのリーダーに最適な人物であった。

 北角氏は流通ルートの確保、原価計算、バンドルソフトの供給元との折衝など、やらなければならないことがたくさんあったため、開発者のまとめ役をひろ.氏に依頼した。ひろ.氏は開発者の連絡用にホームパーティを開き、当時の日本語化ソフトの作者に趣旨を説明して集まってもらった。こうしてHP 200LX日本語化キットの開発が始まったのだ。

 ひろ.氏がホームパーティを開いたのは6月末のことだったが、200LXの発売が9月1日に予定されていたため、それと同時に発表するとなると作業期間は3ヶ月もない。そこで、当初はフリーソフトウェアをほとんどそのまま収録し、インストーラをつけるぐらいのつもりだった。最終的には、市販ソフトとしての完成度と魅力を高めるために徹底的な改良を行うことになるのだが、そんなたいへんな作業になろうとは、だれも予想していなかった。

■DOSの日本語化ソフトの改良

 DOSの日本語化ソフトについては、みゅう氏の「fontman」と「yadc」をベースにして開発することになった。fontmanとyadcはすでにほとんど完成の域に達していたため、みゅう氏のやるべきことはそう多くなかった。

 フォントドライバのfontmanは、全角フォントと半角フォントの療法をコンベンショナルメモリにロードせずにCドライブから直接読めるように改良された。また、恵梨沙フォントとFONT.14という独自形式のフォントへの対応をやめて、FONTX2形式のフォントだけを扱うように仕様変更された。

図1 画面モードを選択するためのユーティリティ
[画面モード選択ユーティリティ]
 みゅう氏のもうひとつの作品、ディスプレイドライバのyadcは、画面モードを柔軟に設定できる半面、複雑なオプションが初心者には分かりにくかった。そこでみゅう氏は、オプションを整理するとともに、画面モードをメニュー形式で選択するユーティリティを新たに開発した(図1)。

図2 上の画面で[ZOOM]キーを押すと下のようにズームされる
[ズーム前画面]
[ズーム後画面]
 みゅう氏の仕事はここで一段落したのだが、ほかの開発者が必死で開発している中で、ただ待っている気にはならなかったのだろう。みゅう氏の余った労力は、さらに機能を追加することに傾けられた。ディスプレイドライバには、テキスト画面のズーム機能が追加された。たとえば図2-上の画面で[ZOOM]キーを押すと、図2-下のように画面の一部が拡大表示されるのだ。もちろん、このままアプリケーションを操作できるし、画面からはみ出した部分をスクロールしてみることもできる。

 また、一部のアプリケーションが使用しているエスケープシーケンスをサポートするために、みゅう氏はANSI.SYS互換のドライバも新規に開発することになった。みゅう氏が依頼されてから数日で完成させてしまったのには、驚かされたものである。

■EMSドライバの改良

 ひろ.氏のEMSドライバ「EMM100」も、フリーソフトウェアの段階でほとんど完成していた。200LXで使うには若干問題があったが、それは簡単な修正で対応できてしまった。

 ただし、EMM100が使うEMSの領域を確保するためのプログラム「MAKEEMS」には、市販ソフトとしては不親切なところが残っていた。MAKEEMSを実行する前に、あらかじめファイル配置最適化ソフトなどでディスクの空き領域を連続化させておく必要があったのだ。たとえファイル配置最適化ソフトを日本語化キットにバンドルしたとしても、これでは使い勝手が悪い。そこでひろ.氏は、MAKEEMSにディスクの空き領域を連続化させる機能を持たせ、この問題を解決した。しかし、そのためにはディスクの管理領域を直接操作しなければならないため、ちょっとでもミスがあるとファイルを失うことになる。ひろ.氏は開発過程でディスクを何度も飛ばしながら、バグをなくしていったという。

■DOS上での日本語入力

 フリーソフトウェアだけで日本語表示が可能になっていた100LXだが、DOSで日本語を入力するためには市販の日本語FEPが必要だった。当然、日本語化キットにも日本語FEPをつけなければならないわけだが、開発期間が短い中でいちから開発するのはむりがある。そこで、100LXユーザーに定評のあった「WXII+」の機能限定版をバンドルすることになった。

 しかし、WXII+を使うためには、KKCFUNC.SYSという日本語版のDOSに付属するドライバも必要だった。これは100/200LXのDOSには入っておらず、WXII+にも付属していない。そこで、ひろ.氏がKKCFUNC.SYS互換のドライバを作ることになった。さいわい、ひろ.氏は日本語化キットと同時進行で執筆していた「HP 100LX/200LX BIBLE」の付録として、同じ機能のドライバを開発中だったため、開発の手間はほとんどかからなかった。


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